kaimu21のブログ

書籍などを紹介したり、日々疑問に思ったことなどを書いていきたいと思います。

彼女は頭が悪いから、読了!


 
 実はこの小説、実際の事件を元に構成さていて、その事件に疑問を持った著者の姫野カオルコさんが取材を得て描かれたものです。


 2016年5月10日に起きた東京大学誕生日研究会強制わいせつ事件
東大生によって設立されたインターカレッジサークルで、実際には性行為を目的としたサークルだったそうです。


そこで一人の女子大生が東大生5人に輪姦され、逃げ出した被害者の証言で事件が発覚しました。実際にあった出来事を元に作られた作品なだけあってとても現実味があり、他人事ではないような感覚に陥りました。



ということで今回は彼女は頭が悪いから、について紹介していきたいと思います。

彼女は頭が悪いから (文春文庫)
彼女は頭が悪いから (文春文庫)
文藝春秋
Digital Ebook Purchas

1 概要


 タイトル: 彼女は頭が悪いから         著者: 姫野カオルコ


 ジャンル: フィクション                                                    


 ページ数:  473ページ                                               出版日: 2018年7月


2 要約


 横浜市郊外のごく普通の家庭で育った神立美咲は女子大に進学する。渋谷区広尾の申し分のない環境で育った竹内つばさは、東京大学理科一類に進学した。横浜の奥フェスの夜、二人が出会い、一目で恋に落ちたはずだった。しかし、人々の妬み、劣等感、格差意識が交錯し、東大生5人によるおぞましい事件につながってゆく。


3 特徴


差別
 普段私達が普通に生活している中で無意識の差別は多岐にわたって散在しています。
そんな社会の中で私達は密接に関わり合いながら過ごしていると言うことを理解しなければなりません。


例えば学歴や容姿、貧困や環境格差などで相手への見る目が変わったり、態度や言動を変えたりなど、自分では気づかない内に相手を侮蔑する発言や軽蔑、軽視的な行動が潜在的に刷り込まれている可能性があります。


それらの行動に心当たりがある人や自分自身も例外ではないと感じている人はたくさんいると思います。社会で生きていくと優劣を感じさせるような広告や世間の認識で溢れていて、嫌でも差別が可視化されてしまいます。そう言ったものに左右されることなく自制心を保ち、客観的に物事を把握していくことが大切だと思いました。



女性軽視
 この作品で特に顕著に表れていたのが女性軽視発言や行動の数々です。
今は多様性や女性への配慮などで昔ほど男女間での差別意識は無くなってきてはいますが、まだ男性の意識 (女性も例外ではない) の中には昔からの女性に対しての認識や偏見が名残として根付いているように思われます。


 決められた役割を無意識に自認してしまう女性もそうですが、それにいつまでも縋り付いて男性に有利な理想像を作り上げるのは愚かな行為であり、女性への尊重が欠けてしまうことに繋がりかねないことなのです。


女性だけでなく、男性もLGBTの方々もみんな誰の枠にもはまらない存在だと言うことを理解するべきだと思います。



被害者への避難
 東大生男5人に輪姦された被害者の女子大学生に対して大勢の大衆が誹謗中傷とも取れるような避難をSNSに投稿している描写がありました。


東大生を狙った勘違い女だとか、偏差値の低い女のせいで東大生の将来が台無しになるのはかわいそうなどといった加害者を擁護するようなコメントです。


この描写から鑑みるに東大生=全知全能でその東大生を狙う女性は (それは東大生も同じ) 皆下心があり、そんな事をされても文句は言えないなどといった憶測や偏見があったのでしょう。偶然出会っただけかもしれないのにです。


だからといって犯罪者を擁護するのは間違っています。被害者が東大女子だったらどうだっただろうか?普通偏差値の大学生の反抗だとしたら?そしたら被害者を擁護するのだろうか?咄嗟にこういった発言が出る事は私たちが普段から差別社会の中で生きている証なのかもしれない。
 


4 印象
 
 日常の中で知らず知らずのうちに差別心が芽生え自尊心や優越感、相手に対しての傲慢な考え方など私たちの生活で経験する範囲で、しかも何気ない日常の中でそれらを表現していたので、フィクションですが現実として重くのし掛かりました。



5 感想、おすすめ
 
 選民思想や世襲制、人間の尊厳に関わることがたくさん書かれているので気分を害する人もいると思います。なので安易にお勧めする事はできませんが、私は自分の浅はかさと新しい視点に気付かされたと感じているので読んでよかったなと思います。


ここまで最後まで読んでくれた方ありがとうございます。
                      
                        では、また〜